9/2 昔話 −岡野玲子さんのフォロー−

二年前?の冬くらいに、ハードオフエコスタジアムで手塚眞監督の『OKUAGA』を上映した際、発起人であったから、パネリストで呼ばれた。そこに、手塚さんの奥様の、岡野玲子さんもいらっしゃって、僕はすこぶる緊張した。

 

パネリストとして登壇した僕は、「なぜ阿賀で映画を撮ろうと思ったのか」という質問を受けた。

(何故って…。何故って…。3泊4日の撮影だし、宿泊費がダントツで安かったからなんて言えやしないよ…。)

 

なーんて思っていたので、「直感」と答えることにしていた。お客さんからはクスクス笑い声が聞こえていて、そりゃそうだよなぁ…と思ったし、当日司会をしていたNAMARAの江口さんも「直感?!」みたいにいじってくださった。

と、そんな時、岡野玲子さんが一言口にした。

「このくらいの若い年齢の人は、『直感』で動くもので、優しく見守ってあげてください」って。(実際のところはうろ覚え、緊張してたし。でも、こういう趣旨のことを言われたんだ)

 

それがどっかね、嬉しくて、守られてるなぁと思えて。今この瞬間だけじゃなくて、手塚さんに「監修お願いします」って馬鹿なことを言った時のことから、その後ガイナックスの山賀さんにボコボコにされた後までの記憶を、僕の憂鬱を、一言でくるんでくれたような感動があった。

 

だからって直感頼みだけで生きていけるほど大した才能じゃない。頭も使う。でも、ここぞという時は素直に直感を信じる。直感が生まれない時はえいやえいやと身体を動かし、少しでも歩みを進める。

 

今も劣等感とか制作の甘さ、財布のヒモにボコボコにされているが、もっとこい、もっとこい、なんて調子に乗っている自分がいる。構ってもらえるだけ救いだ。たとえ一人でも孤独と呼ぶには驕りだ。

 

 

岡野玲子さんにフォローをもらった会は終わり、そのあとはイタリア軒の近くの料亭でご飯を食べていた時、手塚さんは基本的に意地悪な人なので岡野玲子さんに「あれ直感だけど、本当は宿泊費が安かったからだよね」なんて言ってしまうものだから、僕はその場で身体を小さくしようと努めるのであった。おしまい。