7/20 人生の落第者

「水に流せ」「もっと前向きに生きろ」なんて言葉が巷に蔓延して個人の人生に多大な損失を与え続けてきた現代のはなし。人間が生産性や経済性および即効性で語られ、死にたい人間たちや足がすくんでしまう人間が異常扱いされる現世のはなし。

 

萬代橋を渡りながら思ったことがある。

少し身を翻してしまえば簡単に川に沈んでしまい、死んでしまえる橋を俺は渡っている。別に大したことではない。車に当たれば死ねる。薬品を混ぜれば死ねる。ただ萬代橋の方がよりロマンスを感じれて死ねるのだ。それは他の死よりも尊い

 

死への欲動は、同時に変化への欲求、すなわち生への欲動である。死を想うことは答えのない生への足掻きであり、どうやらこうすることでしか真っ当な人生は得られないらしい。

 

人生に向き合わず逃げることほど簡単で嘘つきなことはない。人は、なぜ人生から逃げるのか?それは心の静寂を求めるからである。

 

失敗への恐怖から非難を遠ざけるようとする心境まで、度重なる不幸な予感から人は逃げようとする。

 

俺はそんな人生は選ばない。

 

死にたくてたまらなかった日々は平穏な生活を求めるためにあったのではなく、観てくれる人が楽しんでくれる映画を作るためにあったのだ。その原因が決して人に受け入れられるものではないとしても。

 

人生とはもっとくたくたなものだ。

 

ヨボヨボの肌で若者を蔑む老人になどなってたまるか。死ぬまで人を愛おしく思いつづけ痛みや悲鳴を自分の物語に迎え入れられる人間に俺はなるのだ。

 

人生の落第者で何が悪い。